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音大受験生が学ぶ「音楽の側(がわ)」とは

音大受験生

ISMギタリスト養成所では1997年より毎年音大受験生を受け入れていましたが、2023年度は受け入れを中止しました。音大受験生として何を学べばいいのか・・・親御さんからの相談が多いのでこの記事に書いておきます。

音楽の側(がわ)

音大受験生が勉強するのは「音楽の側(がわ)」です。器(うつわ)や入れ物とでも表現しましょうか、表面的な音楽の技術を身に付けるんです。

例えば、楽器の技術、読譜、聴音、音楽理論の知識、譜面の分析、音楽の歴史の解釈、ジャンルやスタイルへの対応などです。

審査員

私も数多くの音大で受験生を審査してきましたが、審査する時に考えるのは「この音大に入ってちゃんと中身を入れてくれる学生か否か」ということです。楽器の技術や音楽理論などは授業さえ進めれば向上するものです。受験の時点で技術点が高い人、音楽理論的に知識が多い人が受かるのではありません。広く大きな音楽の側(がわ)を持っている人が受かります。

良い例・悪い例

受かる人の良い例として、自分の得意ではないジャズやクラシックや民族音楽の知識は多くないけど勉強している状態で、自分の得意なジャンルと楽器演奏がある程度しっかりしていて、音楽の歴史や理論に興味を持ち日々学んでいる。そしてそれを楽しんでいる状態です。これは審査員は一発で分かります。

落ちる人の悪い例として、ブルース・ギターが好きでまねごとは一生懸命やるけども、他のジャンルや歴史や理論は受験に受かるための嫌な勉強と考えている状態です。どれだけ学力があっても、この人は音楽の側(がわ)がないので、受かりません。音大4年間で指導しても受け入れる器(うつわ)がないからです。

音大で学ぶこと

音大で学ぶことは音楽の側(がわ)、器(うつわ)の中に入れる音楽人生のサンプルです。西洋音楽史、世界史、文化史を踏まえた総合芸術の流れと音楽への向き合い方、哲学への応用です。どの音楽のスタイルでどのように卒業後に社会で音楽活動するかという音楽人生のサンプルを勉強します。いいですか、サンプルですからね。

なぜサンプルか

なぜ音大は音楽人生のサンプルかというと、4年では学びきれないからです。従って「今後その器の中にはこういうモノで満たしていくといいですよ」という指導をします。

勉強は卒業後

本当の勉強は卒業後です。ここでサンプルを参考に音楽の側(がわ)の中に経験をしながら本当のモノを入れていくんです。音大卒業した瞬間に学びを辞める人が音楽人生を歩めないのはそのためです。年間何万人の音大卒業生がいると思いますか?日本でも何千人もいます。音楽人生を歩めるのがほんの一握りなのは、この原理に気付いている人が少ないからです。

まとめ

音大受験生は音楽の側(がわ)をキレイに形成しておいてください。音大に入ったらサンプルを学んでください。音大を卒業したら音楽活動と同時に本当のモノで満たしていってください。

そして、実は音大受験と、音大のサンプルはすっ飛ばすことができます。わざわざ音大に行かなくても、音楽の側(がわ)さえ形成できれば、社会的な音楽活動で本当のモノをダイレクトに入れて行くことができます。音大出身じゃない音楽家が多いのはそのためです。私も子供には音大に行かせませんし、ほとんどの音楽家コーチング・クライアント、セミナー受講生も音大卒ではありません。

側に入れるもの、器に入れるもの、これが分かれば音楽人生勝ちなんです。

何を入れるかはこちらの記事で説明しています。

津本幸司(he/him)