簡単に考えます
まずベイズ統計の話はしませんのでご安心ください。素人さんにも分かりやすいようにする反面、統計学的には若干の語弊がありますので専門家の方は目をつぶってください。
さて、投資家が集まる会合に行くと必ず話題になるのが「投資手法」です。「バリュー株投資かモメンタム投資か」などの話題から始まりワイワイやるだけのことです。私は会合で話を合わせることはできますが、自分はどちらにも属さないと考えています。私は自分自身を「行動科学的投資家」という一言で表現できると思います。音楽家としての右脳、直感などは完全に無視して、プロバビリティ(確率)のみを統計的に計算し、人間心理と脳科学によって引き起こされる行動科学を客観視して資産形成するのが行動科学的投資家です。少し難しいので簡単な計算を例に考えましょう。
例①
「この行動を実践すると7割の確率で音楽家として経済的に成功します。」
と聞くと、どう思いますか?7割成功するのでその行動を実践したくなるでしょう。
「この行動を実践すると3割の確率で音楽家として経済的に失敗します。」
と聞くと、印象が変わるでしょう。悪い側面を提示されると確率が3割でも怖くなるものです。まず、この心理を覚えてください。そして、そもそもこのように表面上のプロバビリティ(確率)を見る方法は、音楽家としても行動科学的投資家としても間違いになります。
理由
その理由は「時間」と「影響」という二つの概念が抜けているからです。まず「時間」を考えましょう。
「この行動を実践すると7割の確率で10年で音楽家として経済的に成功します。」
と聞くと、どう思いますか?7割の確率よりも、10年という時間に戸惑うのではないでしょうか。
「この行動を実践すると3割の確率で3年で音楽家として経済的に失敗します。」
と聞くと、失敗にたったの3年ですので、この行動の実践をためらうでしょう。次に「影響」を考えます。
「この行動を実践すると7割の確率で10年で音楽家として経済的に成功し、1000万円の資産が形成できます。」
と聞くと、今度は1000万円という数字に意識が行くのではないでしょうか。「現在の労働で年間100万円の貯金をして10年経つのと同じだから、この行動を実践する価値があるかもしれない」と思うことでしょう。
影響を数値化
この1000万円という数字は「影響」を数値化したも
のです。しかし、
「この行動を実践すると3割の確率で3年で音楽家として経済的に失敗し、1億円の借金を負います。」
と聞くと、「3年で1億円の借金を負う可能性があるのは怖すぎる」と思いますよね。数学や統計が苦手な方でも、「どのような結果を期待しているか」という「期待値」を正しく計算しているのです。実際に計算してみます。
成功期待値=0.7(7割)*1000万円 ÷10年 = プラス70
失敗期待値=0.3(3割)* ( マイナス10000万円) ÷3年 = マイナス1000
お分かりでしょうか? 成功する確率が圧倒的に大きいのにも関わらず、期待値は失敗する方がとんでもなく大きな値になっています。先述の行動の提案は、
「この行動を実践すると、成功の期待値は70で、失敗の期待値はマイナス1000です。」
と言っているようなものなのです。ここまで来れば誰が聞いても、その行動を実践すべきでないことは分かりますよね。これが行動科学的投資家の正しい確率の計算方法です。
全部に使える
この計算は投資や資産形成だけでなく、音楽活動、人間関係、身体管理にも使えます。この計算をせずに「たくさんの人が良いと言っていたから、この活動をしている」というのがいかに危険かが分かるでしょう。多くの人が食いつくダイエット法を実践した肥満体型の人が多いのもこの計算ができていないからです。
まとめ
プロバビリティ(確率)を考えるときは「時間」と「影響」を同時に考慮して、正しく期待値を計算してください。
まとめ
この記事は
上記は『音楽家の資産形成術』の50章のうち第40章を簡略化しました。
最後までお読み頂きありがとうございます。
津本幸司
こちらでお目にかかれることを心待ちにしています。